人事BPOとは?業務効率化・人手不足解消を実現する方法と導入のポイントを解説

採用、給与計算、勤怠管理など、企業の人事業務は多岐にわたり、担当者の業務負担も大きくなっています。さらに、人手不足や法改正への対応など、課題は年々複雑化しています。こうした中、人事部門の業務効率化とリスク回避を両立する手段として注目されているのが「人事BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」です。
本記事では、人事BPOの基本的な仕組みや対象業務、導入のメリット・デメリット、導入手順と業者選定のポイントについて、わかりやすく解説します。
1.人事BPOとは?基本的な仕組みと対象業務

人事BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の仕組みや対象となる業務について説明します。
BPO(Business Process Outsourcing)とは、企業の特定の業務プロセスを一括して外部の専門業者に委託するサービスです。
アウトソーシングよりも幅広い業務を委託することができ、業務プロセスの最適化や業務改善が含まれる点が特徴です。
人事業務のBPOでは、採用や給与計算などを一括して委託することができます。
具体的な委託業務としては次のような業務があります。
・採用
・給与計算
・労務管理
・福利厚生
・人材育成・研修
対象業務 | 内容 |
採用 | ・求人広告の作成・応募者対応・候補者管理・選考管理・面接調整・選考結果の通知 |
給与計算 | ・給与計算・賞与計算・税金計算・納付・住民税年度更新・年末調整 |
労務管理 | ・勤怠管理・雇用契約書の作成・就業規則文書の作成や更新管理 |
福利厚生 | ・健康診断の実施・確定拠出年金・財形貯蓄・団体保険の手続き、運用管理・・・カフェテリアプランサービス提供・住宅補助制度設定・管理 |
人材育成・研修 | ・社員研修のプログラム設計・運営・スケジュール管理・進捗管理 |
2.人事業務BPO導入のメリット

人事BPO導入は企業の人材不足解消やコスト削減など、さまざまなメリットがあります。
■人手不足の解消
慢性的な人手不足に悩む企業にとって、業務の一部を外部委託することで、リソースを有効活用できます。
正社員の人手不足を感じている企業は全体の半数以上にのぼり、人手不足による倒産も深刻な問題となっています。
このような中、専門的で複雑な人事の業務負担を軽減することで、バックオフィス業務全体の人手不足を解消し、業務が円滑に回るようになる効果を期待できます。
■業務の品質の向上
人事業務専門のBPO事業者に依頼する場合、専門の担当者が業務プロセスの最適化を行います。そのため人事の専門的な知識を持つ従業員が自社にいない場合でも、業務品質の向上の効果が期待できます。
■コスト削減
人事BPOの導入では業務プロセスを見直し、最新のツールやシステムを活用して業務を効率化を進めます。それだけでなく、作業時間が短縮され、結果としてコスト削減にもつながります。また、社内での人員配置や採用、教育にかかるコストも削減できます。
■コア業務への集中
人事業務の中の定型業務をまとめてBPO事業者に委託することにより、企業の人事担当者は、より戦略的な領域に集中することができます。採用戦略や組織開発、人材開発などに注力することで、企業の競争力を高めることにつながります。
■法改正への対応がしやすくなる
近年の「働き方改革関連法」に伴う労働基準法の改正のような法改正があった場合、企業側はその都度制度改定などを行う必要があります。
この対応には、法律に関する知識も必要になるため、社内に専門部署がない場合は迅速な対応が難しくなります。専門知識が豊富なBPO事業者に委託することにより、コンプライアンスを確保しながら、効率的に制度に対応することができます。
3.人事BPOの注意点とデメリット

一方で、人事業務のBPOにはデメリットもあります。ここでは人事BPO導入時の注意点について説明します。
■個人情報のセキュリティリスクがある
人事業務では従業員の個人情報を扱うため、外部に委託することで個人情報漏洩のリスクがあります。
個人情報の不正利用や、企業の信用の失墜など大きな損失につながる可能性も否定できません。そうしたリスクを避けるため、特に人事業務のBPOでは、委託先のセキュリティに関する確認は必須です。安全な機密情報の取り扱いのためにはPマークやISMS認証を取得している事業者を選定することも重要です。
■人事業務のノウハウが蓄積されない
外部に委託した業務に関して、社内にはその業務のノウハウが蓄積されないデメリットがあります。しかし、将来的に契約を解除し、再度自社内で業務を引き継ぐ可能性がある場合は、委託先と連携しながら社内にノウハウの蓄積をしておくことも可能です。
■導入時にコストや負担がかかる
BPOには運用開始までの準備段階で時間やコストがかかります。
単に業務をアウトソーシングするだけでなく、業務プロセスの見直しや最適化、業務改善も含まれるからです。また、自社に合ったBPO事業者を選択にも時間がかかる可能性があります。運用を開始するまでに一定の期間がかかることを踏まえておく必要があります。
人事業務にBPOを導入する場合、準備期間がかかることも踏まえて年末調整や新卒採用時期などの繁忙期は避けた方がよいでしょう。
■リアルタイムな対応が難しい場合も
人事業務は給与計算や年末調整など、従業員からの問い合わせが発生する可能性が高い業務です。外部に委託していると、リアルタイムに問い合わせへの対応ができない可能性もあります。対応をスムーズにするために、委託先とはコンスタントにコミュニケーションを取っておくことで、迅速な対応も可能となります。
4.中小企業2社のBPO導入モデルケースから見る人事業務改善のヒント

人事BPO導入にさまざまなメリットがあることはわかっていても、「中小企業でも本当に効果があるのか」「具体的にどんな業務を任せられるのか」といった疑問や不安を感じる管理者は少なくありません。
本章では、そのような場合の参考例として、中小企業で人事BPOを導入したと仮定したモデルケースを2件ご紹介します。自社に置き換えて考える際のヒントとして、ぜひご活用ください。
■モデルケース①:製造業
企業の業種・規模 | 金属加工業/従業員数:約80名(関東地方) |
対象の業務 | 勤怠管理、給与計算、年末調整 |
導入前の課題 | 総務担当者1名で人事・経理・庶務を兼任しており、毎月発生する人事業務(給与計算や勤怠管理)に追われて残業が常態化。法改正への対応も後手になっていた。 |
予想される効果 | 給与計算・勤怠業務をBPOに移行したことで、月末月初の繁忙が解消。人的ミスも激減し、残業は月20時間から5時間程度に削減。担当者は設備投資や人材育成など、より戦略的な業務に時間を割けるようになった。 |
■モデルケース②:ITベンチャー企業
企業の業種・規模 | システム開発会社/従業員数:約30名(東京都内) |
対象の業務 | 採用代行(求人原稿作成、応募対応、一次面接の設定) |
導入前の課題 | エンジニア部門のリーダーが面接調整や候補者対応に追われ、本業に集中できない状況だった。採用進行が属人化しており、情報共有も不十分だった。 |
予想される効果 | 採用関連業務をBPO化することで、選考のスピードが上がり、優秀な候補者を取り逃がさなくなった。エンジニアリーダーは本業に集中できるようになり、選考の質を向上させる時間も確保。年間採用数は1.5倍に増加。 |
5.人事BPOの導入手順と事業者選びのポイント

次に人事業務のBPOの導入手順と、効果的なBPOのための事業者選びのポイントをご紹介します。
■導入の流れ
1.現状の課題分析・目的の明確化(事業者によっては委託も可能)
2. 委託する業務範囲を決定(事業者によっては委託も可能)
3.BPO事業者の選定・契約
4.業務の移行
1.現状の課題分析・目的の明確化(事業者によっては委託も可能)
人事業務に限らず、BPO事業者に委託するためにはまず、現状を分析しBPOの目的を明確にする必要があります。コスト削減や本来の業務への集中など効果を出すためには、目的にあった実行可能なプランを立案する必要があるからです。
BPO事業者によっては課題の分析から相談できるケースもあります。
2.委託する業務範囲の決定
次に委託する業務の範囲を決定します。
人事BPOの場合は、勤怠管理や給与計算、採用などさまざまな業務がありますが、どの業務をどこまで委託するかは、その企業の抱える課題やBPOの目的によっても異なります。
しかしどの業務を委託するのが効率的か、自社内での検討が難しいこともあります。委託業務範囲の決定の含めて、二人三脚で相談しながら導入できるBPO事業者であれば安心です。
3.BPO事業者の選定・契約
ここまでの段階を社内で行った場合、BPO事業者の選定作業に入ります。
■事業者の選び方
BPO事業者を選定する際は、次のような点に留意して選ぶ必要があります。
<BPO事業者選定ポイント>
・特徴や過去の実績
・事業者の専門分野が自社のBPOの目的にあっているか
・料金設定が予算に合っているか、料金体系の透明性があるか
・セキュリティが万全かどうか
(情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格の取得の有無など)
・納期が適切かどうか
・イレギュラーな事案に対して柔軟に対応してもらえるか
・将来的に業務範囲の拡大にも対応が可能か
BPO事業者は長期にわたって業務を委託するパートナーとなります。実績や得意分野、セキュリティ面はもちろん、パートナーとして担当者とコミュニケーションがとりやすい事業者を選ぶことも重要です。
4.運用開始準備と業務の移行
BPO事業者を決定・契約を締結したら、運用開始までの準備を進めます。
安定的な運用を開始するためには次のようなステップが必要です。
1.業務の引継ぎ
2.トライアル運用
3.運用検証・改善
4.運用開始
運用開始もBPO事業者と連携し、定期レポートや定例報告会を実施するなど綿密にコミュニケーションを取ることで安定した運用ができ、持続的な業務改善をしていくことができます。
6.まとめ「ゼロからはじめるBPO」が選ばれる理由とは

人事BPOの導入には、導入前に課題を分析し、自社の業務効率化にもっとも効果的な導入プランの策定が不可欠となります。どの業務を外部に委託するのかの切り分けも必要です。
コウシンの「ゼロからはじめるBPO」では、丁寧なヒアリングでお客様に寄り添った導入・運用をご支援します。
複雑で多岐に渡る人事業務も、課題の整理・分析からご支援するため、業務に支障なく効率的な導入を進めていただけます。また、当社のサービスではRPAとの連携も可能です。高度な自動化により、業務プロセスの改善を実現できる点は、大きなメリットです。
JIS Q 27001:2023(ISO/IEC 27001:2022)

一般人材派遣業:労働大臣許可 派13-01-0526
人材紹介業:労働大臣許可 13-ュ-010435

経済産業省認定番号:第37号‐24020002
コウシンの「ゼロから始めるBPO」が、あなたの会社の生産性向上を支援します!