BPOとアウトソーシングは同じ外注という意味で捉えられていることがありますが、実は両者には大きな違いがあります。

BPOとアウトソーシングの違いと、近年導入が急速に進んでいるBPO活用のメリットや注意点について解説します。

1. BPOとアウトソーシングの違いとは？

BPOとアウトソーシングはどちらも業務を外注することです。似た意味で捉えられることもありますが、この2つには明確な違いがあります。

BPOとは、「ビジネス・プロセス・アウトソーシング」の略で、業務プロセスを一括して外部の事業者に委託することを指します。BPOでは、単に業務を外注するだけでなく、業務プロセスの見直しや最適化、効率化や改善も委託先企業に委託することができます。

一方、アウトソーシングでは特定の一部の業務のみを委託します。また一般的にアウトソーシングでは業務改善や最適化などは含まれていません。

業務プロセス全体を委託できることと、業務の効率化、改善などが含まれる点がBPOの最も大きな特徴です。

それではBPOとアウトソーシングの違いについて、具体的に見ていきましょう。

■目的の違い

アウトソーシングでは、主に人材不足の解消を目的として、特定の業務を外部に委託します。業務工数やコストのｎ削減などを目的に定型的な業務の一部を外部に委託することが多く、繁忙期だけの短期間での利用も一般的です。

一方、BPOでは人手不足の解消だけでなく、専門性の高いBPO事業者に業務プロセスを一括して委託し、業務の最適化や効率化、改善などの課題解決を目指す点がアウトソーシングと大きく異なります。業務を委託する前の企画、設計から運用まで一貫して行い、戦略的パートナーとして長期にわたって継続的に活用するケースが多いです。

■委託範囲の違い

BPOとアウトソーシングでは、委託する業務の範囲も違います。

一般的に、アウトソーシングでは特定の一部業務やタスクを外注するのに対し、BPOはアウトソーシングよりも委託する業務の範囲が広く、業務プロセス全体を一括して委託するケースが多く見られます。例えば、人事業務・経理業務・カスタマーサポートなど、その分野の業務を丸ごと委託するケースが多いです。

＜アウトソーシングとBPOの違い＞

	アウトソーシング	BPO
委託範囲	特定の業務やタスクなど一部を委託	業務プロセスの全体を委託
目的	・繁忙期など一時的な人員補填・特定の業務の工数やコストの削減	・業務の効率化、最適化・人手不足解消・コスト削減・コア業務への集中
期間	単発や短期間が多い	長期的な利用が多い
業務内容	Web制作やデータ入力など特定の業務やタスク	・経理、人事などのバックオフィス業務全般・カスタマーサポート、ヘルプデスク・営業サポート事務

アウトソーシングは外部への業務委託全般を意味し、BPOをアウトソーシングの一部とする考え方もあるため、両者を同じような意味で捉えられているケースもあるかもしれません。しかし自社に合った外注のサービスを選ぶためにも、実際にはさまざまな面で違いがあることを理解しておく必要があります。

2. なぜいま、BPOが注目されているのか？

近年、企業のさまざまな課題解決のひとつとしてBPOが注目され、導入する企業が増加しています。ここでは、BPO導入が進んでいる理由や背景を解説します。

■深刻な人手不足

BPOサービスが普及する背景にあるのは、人口の減少や働き方改革による長時間労働の規制などによる人材不足です。

専門性が必要なバックオフィス業務においても人材が不足している中で、専門的なスキルやノウハウを持つBPO事業者への依託は企業の課題を解決し、成長を後押しする有効な手段です。

バックオフィスの事務業務においてIT化などの変化が大きいため、ビジネス環境の変化に柔軟に対応するためにも需要が高まっています。

■ITスキルなど専門的な知識が必要な業務の増加

日本全体の人口の減少はすなわち、労働人口の減少、ITスキルなど専門的なスキルを持った人材の減少も意味します。

ビジネスに必要なスキルを持った人口が減少していることが企業のBPO導入が急増している原因となっています。BPOを活用することで、最先端の専門的な知識やITスキルを持つ事業者のノウハウを活用できるからです。

また、バックオフィス業務自体に、ITスキルの必要性が増しています。専門性を持つ人材を自社で確保したり、教育するよりも、すでにスキルのある事業者に委託する選択をする企業が増えているのです。

■ビジネスの環境の変化でより戦略的なアウトソーシングが必要に

近年のビジネス環境の変化により、企業の経営も変化に対応することが迫られています。そのような中で、企業はより効率的に人材を活用する必要があります。そうした背景から、単に一部の事務作業を外部にアウトソーシングするだけでなく、戦略的に業務プロセス全体を委託できるBPOの需要が高まっています。

特定の業務の委託サービスではなく、広い範囲の業務を効率化し、外部に委託することで、より少ない社員での経営が可能となるからです。

3. BPOで解決できること・導入のメリット

BPO導入によってどのような課題を解決できるのか、導入のメリットについて説明します。

■業務品質の向上と標準化

BPO事業者の専門的なスキルを活用して業務品質を向上できる点が大きなメリットです。

例えばコールセンター運用のBPOを例に見てみましょう。

コールセンターを専門に請け負っているBPO事業者に委託することにより、担当者にかかる大きな負荷を軽減して社内のリソースを確保できるだけでなく、プロのオペレーターの高品質な応対により高い顧客満足度につながります。

BPO事業者にはそれぞれ得意分野があるため、委託したい業務に合わせたBPO事業者を選択して依託することで、業務品質が向上する効果が期待できます。

■採用や教育にかかるコストの削減

経理などのバックオフィス業務やシステム部門は専門的な知識が必要であり、人材不足の状況が続いています。また、社内での人材の採用や教育にはコストもかかります。BPOの導入で、こうした専門的なスキルを持つ人材の採用・教育コストという課題を解決できます。

■コア業務への集中

バックオフィス業務やヘルプデスクなどは直接的な利益を生み出す部門ではなく、いわゆる間接部門の部署です。そのため業務プロセスを一括して外注することで、企業本来のコア業務に従業員のリソースを集中させることができます。

これにより、企業の競争力を高めることにもつながるのです。

４. BPOの対象となる業務は？

それでは具体的にBPO導入に適した業務例をご紹介します。

■バックオフィス業務

バックオフィス業務は最もBPOを導入する企業が多い業務です。具体的には経理・人事・総務などです。これらの業務は時期によって繁忙期と閑散期に差があるため、人材の確保の難しさという課題を抱えています。BPO導入により、こうした課題解決につながります。

■フロントオフィス業務

営業や販売などの顧客との折衝を担当する直接部門の業務でもBPOを導入するケースが増えています。これらの業務の中でも、資料作成やデータ入力などのノンコア業務を切り出して委託するのが一般的です。

■コールセンター業務

直接顧客と関わるコールセンターの業務もBPOの対象となります。コールセンターの受電業務はマニュアル化しやすい業務が多く、架電業務は専門的な営業スキルを求められるため、どちらの業務も専門性の高いBPO事業者への委託に適しています。

■システム運用保守・セキュリティ管理

システム運用保守やヘルプデスク、セキュリティ管理部門もBPOに適した業務です。いずれも専門的な知識を求められるため、社内にノウハウがない場合は専門のBPO事業者に委託する方がスムーズに業務を進められるでしょう。

▼BPOを導入できる業務についてはこちらの記事もご参照ください。

「BPOでバックオフィス業務を効率化！「ゼロからはじめるBPO」導入メリットとは」

５. BPO導入にあたっての注意点

コスト削減や業務の最適化など、さまざまなメリットのあるBPO導入ですが、一方で導入時や運用時に気を付けたい注意点もあります。ここではBPO導入の注意点やデメリットについても解説します。

■運用までには準備期間が必要

BPOを活用するためには、運用を開始するまでに一定の準備期間が必要です。

委託する前に業務プロセスの確認や最適化、必要なマニュアル作成、引継ぎなどの業務が必要になるからです。

迅速な導入が必要で準備期間が限られる場合は、BPO事業者を選ぶ際に導入準備にあたる業務プロセスの確認やマニュアル作成から委託が可能かどうかを確認しておきましょう。

また、月々のランニングコストに加えて、準備段階の初期費用がかかるため、初期投資も含めた費用対効果の確認も重要です。

■ノウハウが社内に蓄積されない

BPOでは業務を一括して委託するため、社内にはその分野のノウハウが蓄積されにくい点がデメリットです。

また、将来的に委託契約を解約した場合、自社で内製化するハードルが高くなることもあります。

それらのリスクを避けるためにも、BPO事業者との定期的なコミュニケーションは必須となります。

６．まとめ

BPOとアウトソーシングには明確な違いがあり、近年は業務プロセスの効率化や最適化を図れるBPOに注目が集まっています。

従業員がコア業務に集中できる環境を作り、企業が成長するためには、単に業務を外注するだけでなく、現状の業務プロセスの見直しが必要となります。