ローコード開発はすぐに始められるDXの重要要素
1995年には8726万人いた生産年齢人口は5年後には7000万人を切り、15年後には6000万人を切ると言われています。人を採用しようにも、労働人口自体が激減しており、従来の様に募集をかければすぐ集まる、といったものでは無くなっています。それらを背景に業務効率および生産性の向上があらゆる職場で求められており、デジタル化・システム化はそのための最有力な手段ですが、コスト面と開発期間面、さらに開発・運用に携わる専門人材の不足により、従来の開発体制や手法を前提にしていては、社内のデジタル・ニーズのすべてを充足することができないのは明らかです。
その状況を打破するために、「ローコード開発」や「ノーコード開発」が、大企業や中堅・中小企業に急速に普及・浸透してきています。今回は、特に「ローコード開発」について、あらましとメリット/デメリットについてお伝えいたします。
「ローコード開発」って何?
「コード」はプログラムのことを指し、「コーディング」はプログラムを書くことを言います。「ロー」は低い・少ないという意味ですから「ローコード開発」はあまりプログラムを書かないでアプリを開発することを言います。
その開発ツールを導入すれば、ベンダーが用意している基本的な機能を実行する多数のコードや業務の一般的な処理の流れを組み込んだ機能単位を積み木の様に組み合わせるだけで、業務にすぐに適用できるアプリが構築できます。ベンダーが用意している「テンプレート」、「サンプルアプリ」が入手できますから、それらを自社内での利用に適するように一部手直しするだけで、目的のアプリを作り上げることができます。
「ローコード開発」のメリットは?
ローコード開発のメリットは3つあります。
一つ目が、専門部署以外でもアプリを作れるという点です。従来、アプリケーションの開発はシステム部門に相談して予算とスケジュールを決めて作ってもらう以外の方法がありませんでした。しかし、ローコード開発によりそれらの開発を自分たちでコストをかけず、短時間で作れるようになります。更に、アプリを自分たちで作るために勝手が良く分かり、それによってノウハウを部門内に蓄積することも簡単になります。また一度作成したアプリをさらに使いやすいものにするための改修も、自分たちの都合に合わせて頻繁に行うこともできる様になります。
二つ目が、引き継ぎが容易という点です。現在のローコード開発ツールによるアプリでは、Excelシートやマクロを解析するよりはるかに簡単に仕組みを理解できるような作りになっています。そのため、即座に問題点をつきとめ修正することができます。従って、開発担当者だけでなく、周囲の人、新任の人が当該業務の担当になっても、アプリを継続して使用・改修できる可能性が高くなります。
三つめが、様々な機能が予めパッケージとして用意されているという点です。ローコード開発はベンダーが専用プラットフォームで提供する機能単位を組み合わせていく、いわばレゴブロックのような作り方になっており、それぞれの機能単位は、基本的に安全に動作するようにできています。それらのブロックは各種の業務処理に必要な基本機能、セキュリティ機能、他のシステムとのデータ連携などの機能があらかじめ用意されています。一般的なシステム開発ではコーディングミスが避けられず、テスト/検証を入念に行う必要がありますが、ローコード開発ではその労力を大幅に削減し、開発期間も大きく削減できます。
「ローコード開発」のデメリットは?
数々のメリットがある一方で、ローコード開発ならではのデメリットも二点ございます。
一つ目は、自社独自の機能、部門独自の工夫を盛り込みにくいという点です。ベンダーが用意した機能単位での構築が前提になりますから、それを超えた機能実現は難しくなります。その為、一般的なシステム開発(プロコード開発とも呼ばれます)と比較すれば、柔軟性・拡張性はどうしても低くなります。
二つ目は、自分たちでツールを使った開発をする前提の設計であるため、ある程度のコーディング知識が必要となる点です。そのため、開発を担当する従業員が習得できるように、研修や指導の機会を儲け、トレーニング期間も考慮して導入していく必要があります。とは言え、習得した知識で現場ならではの課題を現場従業員自身の手で解決し、デジタル化による作業効率向上や負担軽減を実感してもらえれば、DXを自分ごととして前向きに捉えてもらえる効用もあるので、今後の生産性向上を図るための投資という意味合いが強いです。
ローコード開発ツールでは、少数のメンバーで業務適用を開始したあと、問題点や不安箇所を洗い出し、しっかりとした社内ルールを策定した後、他のメンバーに利用を広げていくことがお勧めです。
ローコード開発の人気ツール
ローコード開発をスタートするのは難しいことではありません。多くのローコード開発ツールは1ヶ月程度の無償お試し利用プランを設けていますし、Webページなどで使い方を公開している場合が多いので、まずは無料でいくつかのツールを試してみるのがお勧めです。
Microsoft365をお使いの組織では、マイクロソフトのPowerAppsの導入が最も敷居が低いでしょう。チームや顧客が利用するアプリを、簡単に作成できるようになりますし、開発者向けプランを無料で開始して、使いやすいローコードツールを活用することができます。
kintoneも同様にプログラミング不要で自由に業務システムアプリが作れます。ドラッグ&ドロップのマウス操作で直感的に簡単に必要なシステムを作ることができ、お手持ちのエクセルやCSVファイルを読み込むだけでアプリ化することもできます。
ツールの選び方は、対応する言語、既存システムのデータを利用するためのコネクタ/APIの有無、GUIの操作性、テンプレートやサンプルまたは実績の充実度などに着目するとよいでしょう。これまでExcelで業務効率化を図ってきた組織では、Excelデータとの親和性も考慮したいところです。またユーザー数や扱うデータの規模によっても、ツールによる差異があり、同一ツールでもプランによる差異がありますので、ある程度利用規模を見込んで最適なコストのツールとプランを選ぶ必要があります。
「ローコード開発」でDXが進む理由は?
ローコード開発が社内に普及すると、従来はシステム部門に依頼していた開発業務を一部は業務部門で内製できるようになります。それはコスト削減や開発期間短縮につながるだけでなく、業務部門のITリテラシーを底上げさせる作用があります。
もちろんアプリの管理は必要で、ルールを遵守した開発が求められますが、これまでとは比較にならないほど自由度が高く柔軟なアプリ開発が可能になります。その動きが各部署で高まり、多くのメンバーを巻き込んでいくことで、組織全体のITリテラシーが高まり、またIT活用、データ活用の機運を盛り上げていくことができます。そうした一般従業員の意識の高揚こそが、DXを行う上で重要な要素となります。
なお、ローコード開発を進めるときには、なるべく失敗しないツール選びと成功例づくりが大切です。最初に失敗例が続いてしまうとせっかく盛り上がったDXの機運が冷めてしまう危険があります。現場でのローコード開発が軌道にのり、いくつかの成功例を出していくまでの間は、専門の知識やノウハウを身に着けたエンジニアの助けがいつでも借りられる環境が大事になります。社内でそうした助けが得られない場合は、当社のようなサービス業者がお手伝いすることも可能です。まずは自社内でツールを使用してみて、外部業者の助けが必要かどうかを含め、ローコード開発体制を整備していくことをお勧めいたします。