コロナ禍の働き方から見える求人のトレンド
新型コロナウイルスの拡大は、働き方に対する価値観に大きな影響を与えました。その最たるものは、在宅勤務(リモートワーク)が一気に進んだことではないでしょうか。企業様にとってだけではなく、求職者にとっても在宅勤務というものが広く知られるようになりました。私は採用面接を担当することもあるのですが、最近の面接ではほぼ必ずといっていい頻度で、在宅勤務制度に関する質問を受けます。「在宅勤務制度はございますか?」「御社では週何回程度在宅勤務を取り入れておられるのでしょうか?」等々。この傾向は、弊社の採用面接に限らず、求人紹介を求めてくる求職者も同様です。かつてはマイナスの印象を与えかねない質問でしたが、コロナ禍の現在ではすっかり普通の質問になっています。
そこで今回は、在宅勤務の拡大が求職者にどのような影響を与えているのか、私の考えを交えながらではありますが、少しお伝えしたいと思います。
人気求人の変化
「電話応対なし」から「在宅勤務あり」へ
求職者の多くは、求人にエントリーするかどうかを求人票に記載されている内容から決めています。エントリーとは、応募の前段階、応募を検討しているという意志表明のような段階です。求人票で興味を引かなければ、応募を検討してもらうスタートラインにも立つことができません。
新型コロナウイルスが広がる以前、求人票に「電話応対なし」の記載があると、それだけでエントリー数が跳ね上がりました。ご想像がつくかもしれませんが、現在エントリー数に大きな影響を与える記載が「リモートワーク推奨」や「在宅勤務あり」です。求職者の希望する職種や業種などの基本的な条件と合致していたという前提はありますが、リモートワークありという記載を加えただけでエントリーが倍増したこともあります。
余談ですが、エントリー数や求人の応募数に悩まれている企業様は求人票の記載を見直してみると良いかもしれません。在宅勤務制度があるのに記載されていないのであれば、記載をお勧めします。フルリモートワークである必要はありません。在宅勤務制度があるとわかるだけで、応募を考える求職者は増えるでしょう。
在宅勤務を求めるのはコロナ不安?
それとも楽がしたいから?
当初は新型コロナウイルスへの不安から在宅勤務のできる求人の人気が出ているのだろうと思っていました。ですが求職者の話を聞いていると、それだけとは限らない価値観の変化のようなものが垣間見えるようになってきています。在宅勤務を求める理由に、もちろん感染症への不安を語られる方もいます。しかし中には、前職で在宅勤務に慣れて朝起きられるか不安という方や、在宅勤務なら自分の時間も確保できるからという方もいます。そういう理由でも在宅勤務で成果を出している人もいるため、一概に否定できるものではありません。ただ求職者と話す中で強く実感していることは、職種によって在宅勤務への向き不向きがあるように、求職者によっても向き不向きがあるということです。
実際、転職活動に至った理由に、フルリモートに近い勤務形態になってから精神的にまいってしまった、という話を聞くこともあります。人と直接関わらずに仕事を進めることを負担に感じる人もいるのです。在宅勤務に適性のある人は、在宅勤務が導入されたことで効率が上がったり、ストレスが減ったりしていることも伺えます。通勤時間が不要になり自分の時間が増えたことで、自己啓発に意欲的な人材も増えているようです。在宅勤務というと、社員が楽をしているのではないか、仕事をしていないのではないか、と疑念を抱かれる管理職の方もいるのではないでしょうか。そういったことが絶対にないと言い切ることはできません。ですが多くの場合、真面目に仕事をしているからこそ、結果として、そのワークスタイルに適応して成果を出せる人と、その働き方自体が合わない人が現れてきているのではないかと思います。
最後に、既に在宅勤務を取り入れられている企業様もそうでない企業様も、程度の差はあっても、今後も在宅勤務について考えていくことは必要でしょう。一度取り入れられ、多くの人に受け入れられた制度を無くすことは困難です。求職者の話からも、一度でもより働きやすいと感じる働き方を経験するとそれが無かった頃に戻ることはできないのだと感じています。今後は、在宅勤務制度の有無やその運用の仕方と求職者の在宅勤務に対する考え方とのマッチングが、より顕著に採用活動に影響してくるようになるのかもしれません。
from フミちゃん
・1000社以上の企業にスタッフを紹介
・人材業界で30年以上のキャリア
・マネージャーとして事業部を統括
・面接したスタッフは延べ10,000人以上
・年齢:30歳プラス少々